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銀杏川菜酒樓

成都に行ったからには、四川料理のいちばん美味しいレストランで食べたい。どこがよいか、人に聞いてもあまりはっきりしなかったが、噂ではここというレストランに行った。「銀杏川菜酒樓」は、自分の中での中国大陸のレストランで一番となった。もちろんその順位は常に動いているけれど。
予算はひとり3,000円〜お酒は別といったところで、成都にしては高級店。四店舗あるうちの、四川料理を専門にしているのは一店舗だけ。その他の店は、上海や広東の高級料理を出している。つまり、高級四川料理の需要が、それほどしか無いということなのだろう。お酒を入れてもひとり数百円の四川料理の店はいくらもあって、地元の人にとっては、それで十分。
中国のレストランであるから、ホールスタッフのサービスはぜんぜんで、料理の説明も出来なければ、難しいことを聞くと、ひっこんでしまって、呼んでも聞こえないふりをするような態度だから、全体からみたレベルは低い。オーダーした料理は、こちらのペースとは関係なく出てくるし、まだ食べている皿を引こうとする。メニューには写真があり、英語と日本語もあったので、日本人が料理を選ぶのには困らないが、下手に聞くと、価格の高いのから都合の良いようにすすめられる。ある程度、いや、かなりそうした中国のレストラン事情を知っておかないと、本当にいい食事にはなりにくい。
昼と夜と、2回行った。その印象に残った料理を記録しておく。写真を撮っていたが、あえて、一品だけの写真で済ませる。そのほうが、あの味を確かめに、また行こうって気になるから。
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■蒜泥白肉
茹でた薄切りの豚肉で野菜を巻いて、すりおろしニンニクたっぷりの甘辛いソースで食べる。四川料理の前菜の定番なので、あえて頼んでみた。このニンニクソースが、他の店のと比べて、むちゃくちゃ甘い。甘さは、とてもまろやか。わざと甘くしているにちがいない。前菜で、いつもと違う印象を持って、これから先の料理への期待が増す。
■竹蓀鴿蛋湯
アミガサタケとハトの卵のスープ。器ごと蒸すスープで、透明な味わいが出る。一人前のちいさな器で、前菜の後にくる。
■焼汁脆皮茄子
茄子とミンチ肉のはさみ揚げ。これもよくある料理だが、絶品。茄子、肉、甘酢ソースの3つの味にメリハリがあって、口の中で合わさる美味しさがある。火の通り具合は完璧。甘酢ソースは、黒酢、紹興酒、砂糖が基本だが、これには、果物を熟成させたようなソースの風味がした。定番の料理に、新鮮味がある。
■麻婆豆腐
すばらしい。おそらく自家製の辣油を何種かつくっていて、そのうちの2〜3種を合わせている。花椒や豆板醤の香りの油と、熱をあまり通さない、ピーナッツの香りの油と、もうひとつなにか。その油の香りが口から鼻に抜ける。おもわず唸る。具は、ひき肉や豆板醤以外に、なにか苦い味が残るものがはいっている。それが個性になっている。ししとうのような苦味で、酸味もあるから、ある種の唐辛子の漬物を刻んだのかもしれない。
団体旅行者は、陳麻婆豆腐という有名店に行くそうだが、そこの麻婆豆腐は、化学調味料汚染されていて不味かった。店をまちがえたかな??
化学調味料の不味さの原因のひとつに、味が溶け込みすぎるという問題がある。味は、混ざり過ぎないほうが美味しい場合もある。例えば、この麻婆豆腐の場合、具と、油と、豆腐の味がはっきりとわかれていて、それが口の中ではじめて合わさるようになっている。そのほうが、具の味、油の香り、豆腐そのものの旨味を堪能できる。ところが、化学調味料で、ぜんぶにまんべんなく味をつけてしまうと、全体がだらけたものになる。
■臘肉炒芥菜
からし菜と四川の燻製肉との炒めもの。燻製肉の塩味と、からし菜の甘味。
銀杏霜王魚片
■銀杏霜王魚片
水煮魚に近い料理はないか?と聞いたら、これを勧められた。過去に食べたどの水煮魚よりも、格段に美味しかった。白身の魚は、ナマズかな?と思うが、川魚の泥臭みは全く無い。痺れる辛さに、たんぱくな白身魚の舌触り。舌触りのちがうキノコとの組み合わせ。香り、味、すべてが配慮された完璧な料理。目まいがする。
■鍋巴肉片
いわゆる、おこげの餡かけ。これがとくべつなことがないのに、美味しすぎて、説明のしようがない。甘酢餡かけソースになにかあるが、わからない。すばらしい。
■鍋子豆湯蹄花
豚足と大豆の煮込みスープ。スープは、大豆を柔らかくなるまで煮たのと、干し貝柱かなにかでとったのを合わせてある。トロミは、もしかしたら豆乳を混ぜているかもしれない。豚足はそれとはべつに、塩と生姜くらいであっさりと柔らかく煮てある様子。もったりしたスープでありながら、精彩を欠くことはない。
■坦々麺
最後のしめは坦々麺。四川料理は唐辛子や花椒を昔からたくさん使うが、昔の味は、今ほどは辛さを強く感じなかったらしい。そのまろやかな辛味がどういうものか、この坦々麺でわかる。刻んだ漬物の酸味もいい。坦々麺の専門店でも食べたが、これに匹敵する美味しいのは1店だけだった。
■雪花桃泥
デザート。これは失敗だった。この店で唯一美味しくない料理。塩味のスクランブルエッグを、砂糖で甘くしてあるような・・・
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このほかにも三皿ほど食べたと思うが、四川の唐辛子と花胡椒の基本の味にしても、甘酢餡かけにしても、いちいち工夫がされていて、それぞれに風味が違う。
上海を含めて、高級料理店はいくつもあっても、フカヒレとか高級食材を使ったり、レストランの内装が立派なだけで、安い普通の料理を、高級にして出せる技術はない。でも、この銀杏川菜酒樓にはそれがある。
これほどまでに仕事を追及するのは、成都の環境では、なみたいていのことではないと思う。食材の仕入れ、設備の管理、人の教育、あらゆるところで、普通のことができない人たちと接するのだ。それをここまで引っ張り上げるのに、どれほどの苦労があることか、想像を絶する。
また、伝統の料理に新しい技術や工夫をとりいれているところを、あまり表に現れないようにしている、そのさりげないセンスがいい。センスがいいというのは、この国ではすごいことなのだ。
きびしい仕事をしているだろうから、いつまでそれが続くか心配になるが、また食べに行くときまで、がんばってほしい。

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