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塩水鴨

この数日抜け殻のようになっている。
江戸前穴子からはじまって、八幡浜のほーたれ鰯で終わった日本の味から、上海の味に気持ちが戻らない。やっぱり日本はいい。将来のない公共投資で、無惨に山が削られ、海が埋められ、本物の味覚が失われながらも、それでも上海に比べたら上等なものが多い。その上等な楽しみを知る人もいる。
さて、今日は広州から友人がちょっといい日本酒を持ってくる。つまり、美味しいものを期待してくる。「上海の味などたいしたことない」とは言えない。気分を盛り上げてゆこ。
喜久酔
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6月14日 菜単
塩水鴨 (香辛料漬け茹で鴨)
冷拌海折頭 (クラゲと大根の葱油あえ)
油炸臭豆腐 (臭豆腐の油揚げ)
泡竹笋炒肉絲 (竹の子の漬物と細切り肉の炒めもの)
楊梅 (山桃)
泡菜大黄[魚善] (四川泡菜と田鰻の蒸し焼き)
糟腐乳炒空心菜 (空心菜の糟腐乳炒め)
干貝炒飯 (干し貝柱のチャーハン)
紅蛤冬瓜湯 (紅蛤と冬瓜のスープ)
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塩水鴨は過去に何度か作っている。
今回は放し飼いの家鴨を入手した。放し飼いの鶏が地鶏というなら、放し飼いの家鴨を地鴨と言うことにしよう。上海近郊の農家が、自分たちの田畑に放し飼いにしている家鴨は、ミミズ、田螺、カエル、田鰻などを食べて育っている。人工的な飼料で育てられたのとは、味も栄養も違う。地鴨は数が少なくて、市場にはほとんど入ってこない。そこで、早朝5時半に起きて、道の市場へゆく。
道の市場
道の市場
まだ車も走らない静かな時間に、ある道の一角だけお祭りのような人だかり。客は地元のおじいちゃんおばあちゃん。郊外からまだ暗いうちに自転車やリアカーで運んだ品を早朝に売って帰ってゆく。野菜、魚、鶏、いろいろ地べたに並べている。アスファルトの上にビニールを敷いてまな板にし、魚やカエルを捌いている。激しい値段交渉は怒鳴りあいの喧嘩に見えるが、ほんとうに喧嘩になっていることもよくある。ただ、上海の人は口喧嘩までで、殴り合って血を流すようなことは少ない。
地鴨
私養鴨
この家鴨にした。
鶏や鴨は生きたままのを選ぶと、その場で絞めて、自転車の後ろにある熱湯の入ったタンクに浸けて皮にひっついている羽毛をむしるところまでやってくれる。それでも地鴨の羽毛はかんたんに抜けないので、持ち帰ってから毛抜きできれいにする。30分かかる。毛を抜いてから、腹を割いて内臓を取り出す。腸、砂ずり、レバーもいっしょに塩水鴨にする。
ちなみに市販の白くきれいな皮をした家鴨の肉は、漂白剤で洗われたものだと言って、うちのコックさんは買わない。
家鴨
塩水鴨塩水鴨
塩水鴨塩水鴨
塩水鴨には大きな鍋が2つ要る。
ひとつの鍋は、生のままの肉を浸けるスパイスの入った塩水のスープ。17種のスパイスや漢方材料と、葱、生姜、塩を沸かして冷ましたもの。これに7時間浸けて、香りと塩分を染み込ませ、臭みのある血を抜く。
もうひとつの鍋は、同じスープであるが、火を入れて茹でるためのもの。まだ冷たいスープに家鴨を浸け、蓋をして、強火にかけて沸騰してからきっちり3分で火を止める。蓋をしたまま蒸らして冷えるのを待つ。冷えてから大皿に移してさらに冷蔵庫で冷やす。一日置いたくらいのほうが味がなじむので、ここまでを2日前にしてあった。食べる直前に切って皿に盛る。
当日の朝8時。友人を連れて市場へ行く。泡菜魚のための黄魚を探したが、2日続きの雨のせいか、新鮮なのが見つからない。そこで田鰻を試してみることにした。田鰻も白身で、鰻よりも脂がないから相性は良いだろう。
田鰻
ところで田鰻は捌くとたくさん血が出る。あれを溜めて、鴨血旺のようにできないだろうかと、コックさんが真剣に考えていた。
市場から帰ると朝の9時半。時間はたっぷりある。ここからは流れる水のごとく料理が出て、酒が注がれる。日本酒、ウィスキー、焼酎。途中に肝臓をいたわる苦丁茶と田七人参。消化を助けるプーアール茶(下関銷法沱茶90年代)で休憩。口直しのデザートの山桃は胃をいたわる。気持ちの良い時間を長く保ち、食後感を良くするのも味のうちである。
スコッチウィスキースコッチウィスキー
塩水鴨
塩水鴨塩水鴨
塩水鴨は上出来。塩加減もいいし、スパイスや漢方の香りの乗り具合もいい。かすかに肉に野性味があるのがまたいい。脂身があっさりしているのは、地鴨の肉の特徴。ただ、少し水分が多かった。冷やすときに、キッチンペーパーか布巾を巻いて、水分をとってからラップを巻いて冷蔵庫に入れたらよかった。
塩水鴨の肉の味は、日本酒との相性もよかったが、ウィスキーの煙味との相性が格別であった。
冷拌海折頭揚梅
油炸臭豆腐泡竹笋炒肉絲
糟腐乳炒空心菜
泡菜魚
干貝炒飯紅蛤冬瓜湯
糟腐乳炒空心菜がとてもよかった。
腐乳は豆腐を塩漬け乳酸発酵させたものであるが、さらに紹興酒の酒糟に漬けてある。厚みのある風味と香りと塩味によって、めずらしく酒の肴になる野菜炒めとなっている。
田鰻の泡菜魚は、むちゃくちゃ美味しい。もうなにも言うまいと思ったけれど、泡菜魚独自の美味しさではなかった。肉の味が濃すぎる。やはり白身の淡白な味の魚がよい。そうでないと味の濃淡が生まれない。
他の料理もすべて美味しいが、すべてが美味しいと、散漫になって、ひとつひとつの印象が薄れる。たしか魯山人の本に書いてあったと思うけれど、やはり美味しい料理は2品までが良い。今回の場合は、泡竹笋炒肉絲か糟腐乳炒空心菜のどちらかひとつで良いし、おもいきって清炒空心菜にする手もある。干貝炒飯は白いご飯でもよかった。白いご飯によって、泡菜魚の美味しさがより引き立っただろう。まさに、「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」だ。レストランの点菜(オーダー)の料理の組み合わせにも同じことが言えるので、肝に銘じておこうと思う。
沈香老散茶50年代
沈香老散茶50年代
本日のお茶は「沈香老散茶50年代」
酒に酔って気持ちよく飛んで、そのまま飛び続けたくて、さらに酒を飲み続けると、身体に堪えて急下降してしまうが、気持ち良く飛んでいるうちにお茶に切り替えると、さらに上昇でき、遠くまで飛びつづけられる。もちろんそういう効果の強い年代モノのプーアル茶を選んだ。
お茶を飲みながら友人はなにかごちゃごちゃと料理を賞賛していたが、やがて無口になり、ソファーに沈んで眠りに落ちた。ご馳走しがいのある人だ。タオルケットを出して、広州行きの飛行機の時間までしばらく眠ってもらった。

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