プーアール茶.com

追記その1.青菜は上海にあり

上海には青菜が豊富にある。
青菜とは、ここでは葉っぱもの野菜を意味する。秋冬春の涼しい時期は陸上の葉っぱものが多く、梅雨のころから夏の終わりまでの暑い時期は水生の葉っぱものが出てくる、。市内のあちこちにある野菜市場に行けば常に5〜6種類は上海近郊で栽培された青菜が見つかる。それは土がついたままか、あるいは水で軽く洗っただけで、包装などせずそのまま売られている。つまり冷蔵庫には一度も入っていない新鮮な状態。日本人が冷凍の魚を刺身で食べないように(一部マグロなどを除いて)、中国人は冷蔵庫に入った青菜は食べない。
日本人が海外に長期滞在すると、魚と米はやっぱり日本が美味いことを知ると思う。消費者の要求するレベルが高ければ、漁師さんの魚の扱いからして違うので、魚が良いのはあたりまえなのだけれど、そのありがたみは海外に住んでみないとわからない。
上海を離れてしばらく時間が経った今、上海は青菜が美味いということを改めて知って、そしてここに書きたくなったわけだ。
青菜の豊富なのは、長江の河口デルタ地帯というのが関係しているらしい。かつて太古の時代から大河があふれ出すたびに運んできた細かい粘土質の土は栄養たっぷりでしっとりとしていて、青菜の根はそれを好んで元気に育つ。海の方からの水の圧力で行き場を失って枝分かれした水流がいたるところに小川や沼地をつくる水郷地帯は、多種多様な水生植物を育む。そして上海にその新鮮な青菜が届くのは、おそらく1970年代の政策で、都市を取り囲むように近郊農業を発達させたことによる良い点が残っているのだと思う。
一方で、トマト、茄子、玉ねぎ、ジャガイモ、ピーマンなどやや乾燥した土の好きな野菜は育ちすぎるせいか水っぽくて味がない。もしも上海で美味しいトマトが食べられたなら、それは遠くの雲南省とかそのあたりの高地栽培のものだ。だから上海ではトマトの作れない冬のほうが、かえって美味しいトマトが食べられたりする。
青菜はちょっと気難しいところがあって、家庭料理には使いやすいが、レストランでは扱いの難しい食材となる。青菜の味は季節や鮮度や天候までもが大きく左右するので、仕入からして毎日調整する必要があり、肉料理や豆腐料理のようにいつもと同じ味が再現しにくい。安い料理の割に手間がかかる。やわらかく細かい葉を洗って、悪いところを取り除く時間のかかる下ごしらえは、出稼ぎの労働者の賃金が年々上昇してゆく上海では、レストランにとっては稼げない料理となる。
レストランで美味しい青菜料理に出会えるかどうかはそのときどきの勝負となるが、どんなに高くても数百円の安い料理なのだから、とりあえず季節のを1〜2皿頼んでみてほしい。
青菜料理を過去の記事からちょっと検索してみた。
小菠菜粉絲肉片湯
腐乳空心菜
臘肉炒蒜苗
芦蒿炒肉絲
清炒紅菜苔
西洋菜香敍絲湯
清炒金絲芥
ふりかえってみると、ひとつ失敗がある。青菜料理の代表格である「香攤攷粥廚慮Φ罎鬚靴討い覆い里傍ど佞い拭「馬蘭頭」も研究するべき青菜のひとつだった。これは日本に長期滞在しながら、イワシ料理を勉強しないのと同じことになるかもしれない。
よい青菜料理を食べるために、もうひとつ書いておかねばならないコツがある。レストランでオーダーするときには「不要放味精鶏精」と告げて、アミノ酸化学調味料を使用させないことが肝心だ。どの青菜も同じようなベッタリした味になって素材そのものの風味が台無しになる。
ついでに注意する点として、レストランの服務員の短期的な記憶力は15秒である。オーダーを聞いて厨房に注文を出すまでに別の席の客に呼び止められたりして15秒以上かかった場合は、もう一度「不要放味精鶏精」と軽く念を押すほうが良い。
レストラン選びでは、バターなんかで炒めようとするヌーベルオシャレ上海料理はダメ。そういうレストランはフランス租界のしゃれた建物に入っていて、看板料理にフカヒレやアワビがある。
上等な本物の料理人であれば、干しエビ、干しアミエビ、干し貝柱、干し貝、干し蟹、小魚の干したもの、魚醤、腐乳、豆味噌、鶏ガラスープ、豚骨スープ、渡り蟹、各種漬物汁、生姜汁、ニンニク汁、ゴマ油、ピーナッツ油、ネギ油、など伝統の調味料を使い分けて、その時のその青菜のコンディションにベストな味付けをしてくれるだろう。火の通し具合も、青菜それぞれの歯ごたえや香りの立ち方が計算されていることだろう。ピタッと決まった青菜料理はまさに芸術品で、飽食の時代に飢えを忘れた人々にも、食の喜びと希望を蘇させる。
しかし、すばらしい青菜料理の出せるレストランを見つけたら、残念ながらそこはすでに経営危機にある。季節の色彩や料理人の心意気を青菜に見つけることのできる客が減っているからだ。美味しい青菜料理に出会ったら、ぜひそれを褒めてほしい。それが料理人に聞こえたら、料理人は自分の腕に自信を取り戻し、仕事に誇りを感じることができる。(2010年6月)



美味しいプーアル茶

新しいお茶のブログ

search this site.

selected entries

categories

archives

recent trackback

老人と海
老人と海 (JUGEMレビュー »)
ヘミングウェイ, 福田 恒存
茶の本
茶の本 (JUGEMレビュー »)
岡倉 覚三, 村岡 博

links

profile

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM